賃金に関する労使トラブルの事例

労使トラブル 障害年金残業を加味した年俸額を設定した時、残業手当を支払わなくて良いか?

A社では、全社員を対象に月給制から年俸制に変更することを決めました。基本手当×18ヶ月をベースとし、12ヶ月分に均等支給する方法としました。ところが、変更後社員から次々と苦情が寄せられました。残業手当が支払われていないというのです。しかし会社は、年俸制を導入する際に残業手当分を加味した年俸額を設定していたことを理由に、社員の苦情を受け付けず残業手当の支払いを拒否しました。

法的判断
このケースの場合、会社は発生した残業手当を支払わなければなりません。年俸制は、近年急速に導入割合が増している賃金形態です。残業手当を加味した年俸を設定することは可能ですが、年俸制を導入したからといって、ただちに残業手当を支払わなくても良いことにはなりません。年俸制に残業手当を加味した場合は、その分を明確にしなければならず、超えた分については残業手当が発生することになります。
年俸制は、1年間の賃金総額をあらかじめ決める制度をいいます。現在、日本では30%を超える会社が年俸制を導入しているといわれ、今後もこの数字は伸びていくものと考えられます。年俸制には、次にあげるような多くのメリットがあります。

1、より公正な評価が出来る
2、社員の活性化を図ることが出来る
3、社員に経営者意識を植え付けることが出来る
4、賃金管理を簡素化することが出来る
5、優秀な人材を確保しやすくなる
6、評価を賃金に反映しやすくなる

反対に次のことはデメリットと考えられるでしょう。

1、 評価に時間がかかる
2、 年俸が下がったときのモラルの低下
3、 収入が不安定になってしまう

年俸制の場合、残業手当が発生するかということについてですが、時間外労働・休日労働をすれば当然に発生します。発生しないのは労働基準法41条に該当する管理監督者などですので、これにあてはまらない社員には、法定労働時間を超える分にについて残業手当を支払わなければなりません。残業手当を年俸に加味することは可能です。但し、それを超えた分の差額は支払うことになります。

会社が取るべき対策
残業手当を加味して年俸制を定める場合には、年俸の内いくらが残業手当に相当するかを明確に定めましょう。年俸制は、大手企業で導入している比率が高い傾向にありますが、全社員に適用している会社は、まだ少ないようです、多くの会社は、管理職クラスになってから年俸制にする方法を採用しています。導入にあたっては、メリットだけではなくデメリットも考慮し、会社にあった方法を慎重に選択するようにしてください。人件費の削減だけの目的での導入は決してしないようにしましょう。。